【報告】PAJ東日本大震災復興支援プロジェクト 第2回

 執行委員・福留史朗です。
 本年度のPAJ事業の大きな柱の一つである「東日本大震災復興支援プロジェクト」を、12月23日に福島県本宮市の市民プールで開催しました。

 

 今回は、ロンドン・パラリンピック水泳競技の平泳ぎ知的障害クラスで世界新記録で金メダルを獲得した田中康大選手と、視覚障害クラスで銀と銅の2つのメダルを獲得した木村敬一選手、寺西真人コーチ、そして田中選手のお母さんにご協力をいただき実施しました。
 当日は郡山駅で4名を出迎え、車で会場に向かい昼食もそこそこに済ませ、休む間もなく実技指導を行なっていただきました。
 寺西コーチには、地元の水泳選手や日頃選手を指導している福島県障害者スポーツ指導者協議会の皆さんの指導を行なっていただきました。その間、木村、田中両選手はアップを行なっていましたが、両選手が泳ぎ始めるとプールサイドの約30名の見学者やプールで泳いでいた人たちも泳ぎを止めて、彼らの力強く、華麗な泳ぎを食い入るように見ていました。

 

 寺西コーチの指導が素晴らしいのは当然ですが、私が注目したのは、田中選手を指導する田中コーチ(お母さん)でした。田中コーチは短い言葉でポイントだけを指示し、ぞれができているか確認しては泳がせる指導法で、そのアドバイスを田中選手が十分に理解し納得して練習しているように私には映りました。
 田中コーチ(お母さん)に「水泳選手でしたか?」と尋ねると、「泳げません。亡くなった前のコーチの指導方法をそのまま使っているだけです」と話されていましたが、田中選手のすべてを理解し指導をされ、田中選手にとっては世界一のコーチだと感じました。
 ロンドン・パラリンピックで指導者の資質が取りざたされた競技がありますが、田中コーチの指導の素晴らしい点は、選手への愛情と心と心を通わせるための会話が存在していることだと思いました。
 私は、指導の基本は選手を知ることから始まると思います。田中コーチの指導を見ながら私は、単に「親子だからわかる」だけではないのではと思いました。そして、指導の原点がここにあるように思いました。

 

 地元の指導者の皆さんへの実技指導として、寺西コーチによる視覚障害選手のタ―ンやゴール時に使う「タッピング」技術について、木村選手に協力いただき行ないました。受講者の中には、初めで見る「世界の技術」に感激されている方も多くありました。受講者の皆さんには、今回学んだことを地域で生かしていただければ幸いです。

 

 実技の後は、プール隣にある集会所にてロンドンの映像を交えながらの懇親会を行ないました。
 初めに、両選手からロンドン・パラリンピックの金、銀、銅メダルを参加者の皆さん触ていただくサプライズがあり、全員が大喜びでした。中には首にメダルを掛けて写真を撮る方もいらっしゃいました。
 質問時間では「田中選手の一日の過ごし方」「ドーピング」について、木村選手には「どんなお母さんですか」や寺西コーチには「世界と今後どのように戦うか」などの質問があり、パラリンピックへの関心の高さも感じました。
 また、最後まで私たちと行動を共にしていただいた、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会のメンバー3名から、現在の招致活動の状況説明がありました。2020東京招致決定は2013年9月ですが、招致が成功することを皆で願いました。

 私自身、今年2度目の福島での活動でしたが、今回はロンドンで一生懸命頑張った皆さんが一緒であったことから、参加者の皆さんの受け止め方が前回とは何か違うことを感じました。

 

 震災の風化が言われますが、福島の状況は昨年8月、今年8月そして今回と「何も変わっていない」状況でした。
 私は、PAJの活動で被災地の皆さんのすべての気持ちが癒されるとは思いません。ただ私は思います、「私たちの活動で皆さんが、一瞬でも笑顔になってくだされば幸せ」と。
 今回の復興支援プロジェクトは、今まで以上に「スポーツをする人、支える人、見る人」の心が熱くつながったイベントだったと思います。ご支援をいただきました福島県障害者スポーツ協会様、福島県障害者スポーツ指導者協議会様、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会様、多くの福島県の皆様、そして、イベントを盛り上げていただきましたロンドンパラ水泳チーム皆様へ、お礼を申し上げます。
 ありがとうございました。

 

●本事業はスポーツオブハートでいただいた寄付により実施しています。

プールでの指導風景
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