PAJメールマガジン
第30号 2011年11月1日発行
射撃について
日本パラリンピアンズ協会 理事 田口 亜希
(アテネ・北京/射撃)
PAJ会員の皆様、こんにちは。田口亜希です。
先日テレビのニュースで大分国際車いすマラソンを見ました。来年のロンドンパラリンピック代表選手選考大会でもあり、内定を獲得されたと選手もいらっしゃると聞きました。おめでとうございます。
私の競技は射撃です。マラソンやバスケット、水泳のようなメジャースポーツではなく、どちらかと言えばマイナースポーツですので、今回は簡単な射撃競技の説明をさせて頂きます。
射撃が「スポーツ?」っと言われる事もありますが、立派な(?)パラリンピック種目です。オリンピックではクレー射撃(飛んでるお皿のような物を撃つ)もありますが、夏季パラリンピックでは固定された標的を撃つ標的射撃となります。銃の種類はエアーライフル、スモールボアライフル、ピストル等々があり、距離は10m、25m、50mとそれぞれ競技によって違います。種目は全部で12種目あり、障害クラスはSH1とSH2に分けられます。SH1は下肢障害、SH2は上肢障害となり、更にそれぞれにa、b、c (SH2の場合は更に細分化)と分けられ、そのクラスによって車いすの背もたれの高さや、バネ(銃を支える)の硬さ等が変わります。私のクラスはSH1-cで、車いすの背もたれは頚椎7番から24㎝の所までの高さが許可されています。標的には丸い円が描かれており中心を狙い、中心に向かうごとに点数が上がり、最高点は10点です。エアーライフル(圧縮した空気の力で弾丸を飛ばすタイプの銃)種目は10m先の標的を狙い、標的の一番外の1点圏の直径が45.5mm、以後1点ごとに直径が5mmずつ小さくなっていき、中心の10点圏の直径は0.5mmで、その0.5mmを撃つと10点となります。スモールボアーライフル(火薬の力を使って弾を飛ばす銃)種目は50m先の標的を狙い、標的の1点圏の直径は154.4mm、以後1点ごとに直径が16.0mmずつ小さくなっていき、10点圏の直径は10.4mmです。
種目によって撃つ弾数、競技時間は変わりますが、私の行っている種目は2種目とも本戦は通常1時間15分で60発を撃たなければなりません。射撃技術はもちろんですが、集中力が大きな鍵となるメンタルスポーツです。
また、「視力が良くないと出来ないの?」と聞かれる事も多々ありますが、コンタクトレンズやメガネをかけて射撃を行っている人もたくさんいますので、普段の生活で必要な程度の視力があれば大丈夫です。(まだパラリンピック種目ではありませんが、音を聞き分けて撃つ視覚障害者の射撃もあります。)このように老若男女を問わないスポーツですので、私が知ってる選手は69歳で今なおパラリンピックの第一線で活躍しています。
観客席から10mや50m先の0.5mmや10.4mmの標的は裸眼では見えませんが、パラリンピックでは通常電子標的が導入されているので、観客席の方はスクリーンに映った標的で選手が何点撃ったかが見えます。陸上や水泳と違って応援の際、声を出してはいけないので、射撃場内は静かですが、来年ロンドンでは機会があれば是非観に来てください。
ちなみに私の楽しみは自分の競技が終わったら、大声を出して応援できる競技を観に行く事です・・・
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